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【コミックレビュー】「投獄された天才外科医が奇跡のメスを振るう! 『脱獄ドクター いのち屋エンマ』

はるうらら
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みなさん、こんにちは。漫画ライターのはるうららです。
電子書籍読み放題サービス「ビューン読み放題タブレット」で配信中の作品から、『脱獄ドクター いのち屋エンマ』のコミックレビューをお送りします。無料の立ち読みページもありますので、ぜひチェックを!

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漫画大国・日本にはあらゆる作品が揃っていて、医療ジャンルもその1つ。歴史的名作『ブラック・ジャック』を筆頭に、メディア化で好評を得た『JIN―仁―』『Dr.コトー診療所』、医療現場のリアルを深く描写した『ブラックジャックによろしく』などメジャーどころも多いですよね。

さて今回は、そんな中でも異色作の『脱獄ドクター いのち屋エンマ』をご紹介したいと思います。

主人公の円馬光也は、あらゆる手術を人間離れしたスピードと精密さで成功させることから「光速の外科医」と呼ばれた天才。しかし彼は向精神薬の違法販売によって逮捕され、懲役13年という長い獄中生活を言い渡されます。生きる気力を失った円馬ですが、謎の黒服美女によって一時的な脱獄をできるよう手配されて、ワケあり患者に対して腕前を振るう「闇医者エンマ」になる――というのが物語の始まりです。

なんといっても本作が面白いのは、主人公が置かれた特殊なシチュエーションです。

天才外科医だけど投獄中、そして美女の手引で裏口を使って脱獄できるのは夜中の数時間だけ。その限られた時間で難手術を成功させ、何くわぬ顔で刑務所へ戻らなければならない。ハードな依頼ばかりだが報酬は数千万と超高額。

どうでしょう。なんとなく設定だけでもワクワクしないでしょうか。

謎の美女は何者か? なぜ円馬に接近してきたのか?
なぜ円馬は投獄中でお金を使うアテもないのに高額報酬が必要なのか?

このあたりの疑問もストーリー中で徐々に語られていきますが、ネタバレを少し。

愛する妹は円馬にも治せない難病を抱えていて、命を永らえるには莫大な費用が必要。だから外科医時代の彼は、良くないことと知りながら違法薬物のネット販売で荒稼ぎしていたんですね。美女は円馬が売った薬物によって人生を狂わされた一人……という具合に、いろいろ点と線がつながっていきます。

そんなわけで犯罪者とはいえ根っからの冷血ではなく、実は情に厚いのが円馬という男。
ひとたび塀の外に出てメスを振るうときは、「絶対に誰も死なせない」という気迫が満ちあふれています。

たとえば1つしかない臓器を瀕死の息子へ移植させたいため、円馬の目の前で自殺をはかった父親。
普通はどちらを生かすべきかというトリアージ(命の選別)に悩む場面ですが、彼はひと味違います。1つの臓器を生命維持に必要なギリギリの大きさに分割し、息子と父親の両方を生かす。そんな決断をやってのけ、実際に神がかったメスさばきで難手術も成功。

別の依頼では自分の血液を輸血しながら手術に臨み、また別の依頼では手術中に襲撃されて腕を負傷しながら患者をきっちり助けるなど、どのエピソードも無茶と無謀のオンパレード。読んでいてハラハラさせられること間違いなしです。

闇医者に依頼するだけあって患者はみんなワケありで、中には人生を諦めている者も。
ですがどんな手術にも全力で挑む円馬の熱いハートに突き動かされ、その多くは術後に「生きること」の意味を噛みしめます。
天才外科医は体だけでなく心も救う、というドラマの描き方が本当にお見事!

題材が題材だけに流血シーンが多く、女性の裸体もちょくちょく出てきますが、それが苦手な人でなければ全3巻と手頃なボリュームで幅広くオススメできる作品です。

ちなみに作者の富沢順さんは本作に限らず、過労死したビジネスマンが機械の体で蘇る『企業戦士ヤマザキ』や、ラーメン屋の兄ちゃんが伝説の暗殺術を振るう『殺し屋麺吉』など、超ユニークな設定の作品を数多く送り出しています。ハマる人はとことんハマると思いますので、これらもよろしければ読んでみてくださいね!

『脱獄ドクター いのち屋エンマ』作品データ

・作者:富沢順
・出版社:日本文芸社
・刊行状況:全3巻

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