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平凡な主人公が異世界に転生し、元いた世界の知識を駆使してヒーローとなる……ここ数年“異世界転生モノ”が日本でブームとなり、漫画・アニメ・ラノベ業界を席巻している。そんな中、意外な異世界タイトルが登場して大反響を呼んだ。『ドラゴンボール外伝 転生したらヤムチャだった件』(ドラゴン画廊・リー/集英社)だ。

主人公は『ドラゴンボール』を愛してやまない現代の少年。彼はふとした事故から意識を失い、なぜか同作のキャラクター・ヤムチャとして転生してしまう。作中の歴史はファンである彼の記憶通りに進んでおり、このままではヤムチャは「やられ役の弱キャラ」として不遇な扱いになる。それを阻止して幸福になるため、ヤムチャの体に宿った主人公は“この後のストーリーを自分だけが知っている”という唯一のアドバンテージを生かし、運命改変に挑んでいく。

本作が大人気となった理由は、作者自身が『ドラゴンボール』の熱烈なファンというだけあり、原作リスペクトが徹底されているところだろう。絵柄は原作者(鳥山明)と瓜二つ、さらに「当時まだ登場していなかったキャラを探し出して修業をつけてもらい、ヤムチャだけ強くなる」「のちに改心することを知っているせいで悪役キャラにとどめを刺せない」など、メタ的な視点がうまくストーリーに組み込まれている。原作ファンの希望に沿って物語を進めつつ、ラストに待っている意外なオチまで読者を飽きさせない。

ブームにかげりが見えてきた異世界転生モノだが、今なお各国にファンを持つ『ドラゴンボール』と組み合わせることで、思わぬ快作が生み出された。1つの傑作コンテンツが持つ底知れないパワーを、あらためて教えてくれる出来事である。

(担当ライター:浜田六郎)

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