こんにちは!
最近の日本は『鬼滅の刃』が空前のヒット中ですね。
単行本は最終巻の発売(12/4)時点で累計1億2,000万部に到達することが発表され、原作エピソードの「無限夢列車」を題材にした劇場アニメ『「鬼滅の刃」無限列車編』は公開から39日間で興行収入259億円を突破。
劇場版で大活躍した主要キャラクターの煉獄さんが“200億の男”と呼ばれ話題になるなど、その勢いはとどまるところを知りません。
【『鬼滅の刃』コミックス最終23巻表紙イラスト解禁!!】
永きに渡る鬼殺隊と鬼の戦い、ついに決着ーー!
『鬼滅の刃』コミックス第23巻は12月4日(金)発売です。最終巻の表紙は、温かく笑顔を返す炭治郎と禰豆子の二人が飾ります。
発売をどうぞ、楽しみにしていてください。 pic.twitter.com/0RjIeVNGA0— 鬼滅の刃公式 (@kimetsu_off) November 16, 2020
なぜこれほど人気コンテンツになったかの理由はすでに各種メディアで考察されていますが、今回は元・ジャンプ少年の筆者が『鬼滅』のここがツボった!という観点から自由に語らせていただきます。
第一のツボは、圧倒的すぎる昭和ジャンプ感――良い意味での男臭さ・古臭さでしょう。
作者が女性だと初めて知ったときは驚いたものです。
「どんな苦しみにも黙って耐えろ お前が男なら 男に生まれたなら」
「俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった」
舞台が大正時代とはいえ、ジェンダー平等が叫ばれている令和の現代に、すがすがしいまでの男っぷりが炸裂しています。
『鬼滅の刃』のルーツを、昭和生まれの週刊少年ジャンプ作品である『ジョジョの奇妙な冒険』や『魁!!男塾』に求めた論考を読んだことがありますが、わりと同意できます。
まさに当時はこういうノリが全盛でしたからね。
おまけに本作は女性キャラも揃って男勝りに強く、一方的に守られるだけの女性はほとんどいません。その部分は時代に合わせてアップデートされているようです。
こうした「古くて新しい価値観」が今の若いファンには鮮烈に、大人になった過去のジャンプ少年たちにはノスタルジーを伴って心へ響く。
世代を問わず幅広い層に『鬼滅』が受け入れられたのは、そんな魅力があったからではないでしょうか。
もう一つのツボは、「人間は弱い。だからこそ強く美しい」というテーマが貫かれているところだと感じています。
これもまた先輩作品である『ジョジョの奇妙な冒険』の掲げた「人間讃歌」に近いものがありますね。
意外に序盤ストーリーを忘れている人も多いかもしれませんが、家族を鬼に殺されて妹が鬼へと変えられた主人公・竈門炭治郎。
彼が鬼狩りの専門組織「鬼殺隊」に入隊を許されるまで、作中時間でどのくらい経過したか覚えているでしょうか?
――少なくとも2年間です。
山にこもって師匠のもとで厳しい基礎修行を1年、鬼殺隊への最終テストを受ける前段階のテスト(ややこしいですね)に失敗し続けて半年、その前段階テストを突破するための特訓にさらに半年。
才能に恵まれているはずの主人公すらインスタント的に強くなったわけでなく、これほど努力してようやく戦いの前線に出られました。
敵対する鬼たちは多少の傷ならすぐ修復してしまう生命力に加え、上位ランクとなれば何百年も生きて力をつけてきたので、いくら主人公を含め鬼殺隊メンバーが精鋭揃いでも一筋縄では勝てません。
だからこそ人間は極限まで技を磨く。
自分の代で鬼を殲滅できなくても、次の世代に希望と技を託す。
「継承」という要素も作品の大きなテーマだと感じます。
「竈門少年 猪頭少年 黄色い少年 もっともっと成長しろ そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ」
この煉獄さんの想いを託すセリフに、グッと熱いものがこみ上げた人も多いことでしょう。
『劇場版「#鬼滅の刃」無限列車編』本日より公開となります
是非、一人でも多くの方に映画館でご覧頂ければ幸いです。劇場でお待ちしています‼️ pic.twitter.com/Ficd5mNG60— 鬼滅の刃公式 (@kimetsu_off) October 15, 2020
第三として挙げたいツボは、とことん主人公に厳しく作られた世界観という点です。
昭和から令和に至るまで、週刊少年ジャンプに限れば「努力・友情・勝利」という方針を貫いてきましたが、ライトノベルなどサブカルチャー全体では「お手軽チート系」作品もたくさん生み出されてヒットしてきました。
トラックに轢かれて異世界に転生したらチート能力を身に付けていて無敵の大活躍ができる、といった系統のお話です。
私も結構そういうタイプは好きなので全否定するわけではありませんが、どうにも量産されすぎた印象はあります。
だからこそライトな作風が氾濫したことへの反動として『鬼滅』のように、強く魅力的なキャラクターでも死ぬ時は死ぬ、死んだ人間は甦れない、主人公といえど楽に成長できない、そもそも敵側だけが最初からチート級に強すぎる……という骨太でハードな設定が人気を得たのではないでしょうか。
乱暴なくくり方をしてしまえば、平成末期にブームを巻き起こした『進撃の巨人』も路線としては超絶ハード寄りでしたよね。
(あちらは主人公側にもチート要素はありましたが)
あとはメディアミックス要素、アニメの力も忘れてはいけません。
連載デビュー作だけあってやや荒削りなところも原作漫画には見られましたが、そこに一流のスタッフとキャストが集結し、声・音楽・作画・演出までアニメ作品として完璧な仕上げ方をしてくれました。
制作はOVA『空の境界』や劇場映画『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』で知られるufotable(ユーフォーテーブル)が担当しただけあって、ファンの期待を決して裏切りません。
これら諸々の要因が相乗効果をもたらしたのか、漫画とアニメはともに絶好調。
さらにはコンビニ、回転寿司、ホテル宿泊プラン、缶コーヒーなど『鬼滅』コラボ&タイアップが次々に発表され話題となっています。
コロナ禍にあえぐ各企業にとっても、このブームは救世主となることでしょう。
『鬼滅』の作中に出てくる人食い鬼は、私たちの現実社会にはいない架空の存在です。
しかし“人の世に仇なすモノ”を鬼と呼ぶなら、世界規模の不安定な社会情勢・気象変動、新型コロナウイルスが引き起こした恐怖心など、鬼はたくさんいます。
ならば漫画とアニメの力で人々を勇気づけ、そうした不安の緩和に活躍してくれている本作こそ、ほんとうの意味で『鬼滅』の『刃』と呼べるのではないでしょうか。