毎日の業務の中で100%ミスなしで作業することは難しく、美容師ははさみを扱う職業ということもあり、お客様にケガをさせてしまう可能性もあります。
そのような事態に備えて保険に加入していると、お客様との間にトラブルが発生したときや、店舗が火災などの被害を受けたときに安心です。美容室を経営していくとなるとさまざまなリスクを抱えることになります。今回は店舗の保険について紹介していきたいと思います。
美容室に必要な保険とは?
どのような美容室でもまさかという事態がいつ起きてもおかしくはありません。
美容室が加入を検討するべき保険にはどのような種類があるのでしょうか。
さまざまな用途に合わせた保険があるので、よく内容を確認しどのような事態に有効なのか解説していきます。
損害賠償保険
毎日の接客や施術の中で起きるトラブルや事故に対する損害賠償を保障してくれる保険です。毎日の作業の中で、いくら細心の注意を払っていてもミスなく仕事を続けることは不可能に近いです。もしもの事態が起きたときに謝罪だけでは済まないケースもあり、損害賠償金を支払わなければいけない場合もあります。
損害賠償保険の対象事項とは
- お客様がケガをしてしまったときの治療費
- お客様の精神的苦痛に対しての慰謝料
- お客様が通院したときの交通費
- お客様の服を汚したり破損させてしまったときの弁償代
などです。
起こり得るトラブルとして、カットのときに皮膚を切ってしまった、パーマ剤やカラー剤で頭皮が荒れた、お客様の持ち物を紛失または破損させてしまった、施術中にお客様が転んだりしてケガをしてしまった、ヘアアイロンでやけどさせてしまったなどが考えられます。
気をつけないといけないのが、仕上がりに対してのトラブルは対象外だということです。
中には理不尽なお客様がヘアスタイルが気に入らなかったと慰謝料を請求してくることもありますが、そのような場合は損害賠償保険では対応できません。
施術を行う前に事前にしっかり説明をしてお客様の同意を得ることがとても重要です。
「全日本美容業生活衛生同業組合連合会」では「美容所賠償責任補償制度」を紹介しているので、そちらを参考にしてみてください。
施設賠償責任保険
施設賠償責任保険とは、店舗や施設自体の欠陥が原因でお客様にケガをさせてしまったり、物損したときに対応してくれる保険です。
特に高齢の方が来店したときなどは、転倒によるケガも起こり得ます。お客様に対してだけでなく設備品が原因で物損事故を起こしてしまう場合もあるのです。
施術のミスばかりでなく、このような場合も損害賠償責任を負わなければいけないケースもあります。
施設賠償責任保険の対象事項は
- お店の段差につまずいてお客様がケガをしてしまった
- 床が滑りやすくなっていたため、お客様が滑って転倒してケガをした
- お店の看板などが当たり、通行人を負傷させたり車などを傷つけてしまった
などです。
施設賠償責任は、先ほど紹介した「美容所賠償責任補償制度」か、民間の損害保険会社の「施設賠償責任保険」に加入することでカバーできるようになります。
受託者賠償責任保険
受託者賠償責任保険は、お客様から預かった荷物を失くしてしまったり、汚したり、壊したり、盗まれてしまったときに適応する保険です。
それを防ぐため、最近では鍵の付いたロッカーに荷物を入れたりしてもらうお店も増えてきました。
ただ、慌ただしい繁忙期の時期などそこまで気を配ることが難しいこともあり、絶対に盗難や紛失がないとは限りません。
受託者賠償責任保険の対象事項は
- お客様から預かっていたバッグを紛失してしまった
- お客様から預かっていたコートを汚してしまった
- お客様から預かっていたメガネを壊してしまった
などです。
受託者賠償責任保険も「美容所賠償責任補償制度」の補償内容にもなっています。民間の損害保険会社の「受託者賠償責任保険」に加入することもできます。
PL保険
PL保険とは「生産物賠償責任保険」と言い、販売した商品が原因でお客様にトラブルが起きたときに対処してくれる保険です。
一見、商品を製造したメーカーに責任があるのでは?と思いますが、販売したお店も責任を負う対象となります。
商品を購入したお客様の立場に立ってみると、製造しているメーカーと販売しているお店の両者に責任がありクレームの対象となるのです。
PL保険は、製造した側と販売した側の両方に必要な保険であると考えたほうがいいでしょう。
PL保険の対象事項は
- 販売した商品が原因でお客様に起きたトラブル
などです。
PL保険の注意点としては、免責金額があるということです。ある程度、自己負担しなければいけない金額が設定されていて、全額を支払ってもらえるわけではありません。
店舗に関する保険
保険は業務上に起きることだけでなく店舗や設備に関するものもあり、火災保険など絶対に入っておかないと、もしも発生したときに周囲に迷惑をかけることも考えられます。
火災保険
店舗の火災保険は、事業用火災保険に加入しましょう。
事業用火災保険は、火災だけでなく、水漏れ、盗難など、店舗や設備に関わる損害が対象となる保険です。店舗を構えるときには必ず加入しましょう。
火災保険の対象事項は
- レジのお金が盗まれた
- お店が火事になったときに発生した賠償責任
- 水漏れの加害者となってしまった際の支払い
などです。
火事になったときに店舗の現状回復を求められた場合、火災保険に加入していないと多額な金額を負担することもあり得ます。
事業用の火災保険に加入すると、業務に使用する椅子やシャンプー台などの設備も補償してもらえます。
保険会社によって内容が多少違ってきますので、火災保険を選ぶ際はよく内容を確認してから契約するようにしましょう。
休業補償保険
店舗が火災などのトラブルで営業できなくなったときに休業時の損失を補償してもらえる保険です。何かあったときも収入を得ることができるので、従業員の生活を守ることができます。
休業補償保険の対象事項は
- 火事で店舗を修理するための休業
- 水漏れによる修理での休業
- 電気やガスなどが供給できないための休業
などです。
「事業活動総合保険」という保険のように、火災保険や物損、休業補償、損害賠償保険など加入すると幅広くカバーしてくれるものもあるので、検討してみてください。事前に入っている保険がある場合は重複して入らないように気をつけましょう。
まとめ
美容室を経営するうえで起こり得るさまざまな事態に備えて、保険に加入する必要があるか検討してみましょう。
火災保険やお客様に対する保険は、入っていないとトラブルが起きた場合に賠償責任が発生したりとリスクが高くなるかもしれません。
自身の店舗に合った保険プランを考え、本当に必要なものを取り入れるようにしましょう。