電子書籍読み放題サービス「ビューン読み放題タブレット」で配信中の作品から、『アルキメデスのお風呂』のコミックレビューをお送りします。
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主人公の原陽子は、弁当屋で働くぽっちゃり系の25歳女子。もともと自己肯定感の低かった陽子は、仕事の失敗や彼氏の浮気が重なり「私は世界にとって必要じゃない」と人生が嫌になって電車のホームへ飛び込もうとします。
そこを間一髪で助けてくれたのが、王子様のようなイケメン。名前も告げずそっけない態度で去っていった彼が残した「あなたに見えてる世界が全てじゃないです」という言葉に勇気づけられ、陽子は調理経験を生かして研究施設の食堂へ就職することに。そして、なんとその施設で彼女は研究者として活躍する“王子様”に再会したのです……!
こんな感じで始まる本作のストーリー。憧れの男性に偶然再会するのはラブコメの王道ですが、珍しい舞台設定とキャラクターのおかげでユニークな作品に仕上がっています。
まず舞台は茨城県の東海村にあるJ-PARCセンターで、実在する施設なんですね(作品の監修も担当)。原子より小さな素粒子を調べることで、138億年にわたる宇宙の秘密を解き明かそうとする壮大な研究を行っています。そして陽子が憧れる王子様・大池学は、若くして素粒子物理学会を引っ張る天才研究者という設定。
イケメン&天才ですが超がつく変わり者で凝り性な大池くん。今は偶然にも陽子が勤めていた弁当屋の唐揚げにハマっていて、あの素晴らしい味を再現しようと天才的頭脳をレシピ作りに注ぎ込んでいました。そんな時、施設の食堂で陽子が作った唐揚げを食べて味の再現度に驚き「これを作ったのはあなたですか?」「僕にはあなたが必要です」と厨房へ乱入。唐揚げへの情熱を愛の告白と勘違いした女と、あくまで唐揚げに執着する男の不思議なラブストーリー(?)が展開していきます。
はじまりが勘違いなので、両者の気持ちはすれ違いを繰り返します。そもそも何でも数値化・理論化しないと気がすまない大池くんは、抽象的な「恋愛」がどんなものか掴むだけでも苦労する様子。はたして2人の距離は近づくのか、波乱の連続にページをめくる手が止まりません。
どうしてもイケメン・天才・鈍感の三拍子そろった大池くんが目立つストーリーですが、個人的には作中で四苦八苦する主人公の陽子が一番良いキャラクターだと感じます。肥満ぎみで容姿も平凡、料理が好きで素質はあるものの自信がなかなか持てない。そんな彼女が挫折と涙を繰り返しながら、少しずつ前向きに歩んでいく等身大の成長物語が印象的でした。
第1話から電車に飛び込もうとするなどハードな展開もありますが、基本的に話はコメディ路線で、やさしい絵柄も手伝って読みやすい作品になっています。全22話とボリュームが手頃なのもいいですね。いろんなタイプのラブコメを読んでみたい人には、とても刺激的でオススメですよ!
・作者:ニコ・ニコルソン
・出版社:ビーグリー
・刊行状況:全22話
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