確定申告は、独立した美容師や業務委託で働いている美容師なら必ずおこなわなければいけません。ですが年に一度だけなので、なかなか慣れなくて作業が進まない方も多いのではないでしょうか。今回は、確定申告の方法について解説していきます。
(※ 税制度は複雑で条件ごとに細かく分かれており、本記事では一部簡略化した記述もあります。より詳細は管轄の税務署や税理士におたずねください)
確定申告について
確定申告の受付期間
確定申告は大きく2つの種類があり、原則として受付期間は以下のようになります。
- 所得税及び復興特別所得税 2月16日~3月15日
- 消費税及び地方消費税(個人事業者) 1月4日~3月31日
消費税のほうは一般的に、課税売上高が1,000万円を超えた年を含む3年目に必要です。売上高が1,000万円以下でも、前年の1~6月の売り上げまたは給与などの支払い金額が1,000万円を超える方は申告対象になります。
確定申告の流れ
- 申告対象になる年の収支がわかる資料を用意して、帳簿を作成します。揃える帳簿の種類は青色申告の場合、青色申告特別控除の金額によって異なります。白色申告の場合は、青色申告より簡易な記載の帳簿でいいので、記載の仕方などよく確認して揃えるようにしましょう。
- 控除を申告するのに国民年金・生命保険・扶養家族の収入状況・住宅ローンの残高などがわかる資料一式を集めます。証明書が必要な場合は、取り寄せてすべて揃えましょう。
- 申告用紙に各項目の数字を記載して、税金を算出します。申告書にも種類がありますが、個人事業主の美容師の場合は「申告書B」を使うことになります。
- 決算書と申告書が完成したら、税務署に持っていくか、郵送、インターネットのいずれかの方法で提出します。インターネットで提出する場合は、事前に登録などの手続きが必要です。
- 税金が確定したら納付しましょう。
確定申告に必要な書類
- 売上伝票または日報や月報
- 経費類の請求書、領収書(レシート)
- 仕事で使用している通帳
- 国民健康保険の領収書
- 国民年金の控除証明書
- 給与明細の控え(スタッフを雇っている場合)
- 生命保険・地震保険などの控除証明書(加入している場合)
- 住宅ローンの残高証明書(住宅ローンを組んでいる場合)
- 扶養家族の収入がわかるもの(扶養家族がいる場合)
確定申告が終わった後、領収書・各種証明書を最大7年間は保管しておかなければなりません。うっかり捨ててしまったり、失くしたりしてしまうと後で困ることになるかもしれないので、責任もって保管しましょう。
美容師が確定申告で経費として落とせるものは?
経費として認められるものは?
基本的に仕事に関わるものはすべて計上できますが、美容師の場合は仕事に使用する服は原則として対象になりません。仕事用の制服として美容室で揃えている場合以外は、私服との境目が難しいためです。取引先との飲食代は交際費として計上できますが、上限があり、プライベートで行ったものは経費として認められないので注意が必要になります。
- はさみ、薬剤やシャンプーなどの施術に使うもの
消耗品として処理できます。値段が10万円以下、もしくは使用可能期間が1年未満のものは消耗品に該当します。 - 鏡、椅子などの備品類
10万円以上のものは、一括償却資産・少額減価償却資産に該当し、それ以外は減価償却資産として計上します。
- ボールペンなど
消耗品または事務用品として経費計上できます。
- 店舗の家賃
借りている賃貸料を計上できますが、自宅と兼用している場合には全額認められないケースもあります。
- 店舗の光熱費
こちらも自宅と兼用している場合には一部しか認められません。
- 従業員の給料
従業員を雇っている場合に給与として支払いをしたとき。 - 取引先との交際費
取引先との飲食代は交際費として計上できます。 - 交通費
交通費の場合は領収書がなくても申告できます。 - 宣伝広告費
お店の宣伝にかかった費用が計上できます。 - 研修費
研修にかかった交通費や飲食代、研修に必要な物を購入したときに経費として計上できます。領収書や詳しい明細が不明な場合は、報告書を作成すると認められます。
自宅兼店舗の場合に経費計上で注意する点
戸建てなどで店舗と自宅が一緒になっている場合は、基本、店舗として使用している一部の経費しか認められません。同様に、水道光熱費も店舗の占めている割合に応じた金額が経費として認められます。
【例】
敷地の総面積のうち40%が美容室、60%を自宅として使用している場合には家賃・地代の4割を経費として計上することができます。水道光熱費も同様の計算で算出します。
交際費には上限がある
取引先との飲食を経費としてあげるときは、金額に上限があるので気をつけましょう。資本金1億円以下の法人の場合に限り年間800万円以下、または接待飲食費の50パーセントまで認められると定められています。
一括売却資産と少額減価償却資産
取得価額が10万円以上のものは減価償却の対象となり、「定額法で償却する」「一括償却資産として償却する」「少額減価償却資産の特例を受ける」のいずれかの方法で処理しなければいけません。ちなみに使用可能期間が1年未満の場合や、10万円以下の固定資産については消耗品として処理することができます。
一括償却資産とは
一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の固定資産が対象で、新品でも中古でも大丈夫です。一般的な固定資産は、固定資産台帳に記載し月割りで減価償却費を計算しますが、とても手間がかかるために簡略化を目的として、一括償却資産が認められるようになりました。
一括償却資産は個別に管理することなく一律で3年で減価償却する方法で、償却を早めて費用を前倒しすることができます。
少額減価償却資産とは
少額減価償却資産とは、中小企業者等が取得した取得価額10万円以上30万円未満の固定資産が対象で、こちらも新品でも中古でも問題ありません。一事業年度につき合計300万円までなら全額を費用として計上できるので、1年間で300万円以下なら一括償却資産を使わずに処理できます。少額減価償却は以下に該当する事業主が対象となります。
- 中小企業者(主に資本金1億円以下の中小法人と常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人事業主)であること
- 青色申告書を提出している
括償却資産・少額減価償却資産のメリット・デメリット
メリット:早期の経費計上ができるため節税効果がある
デメリット:経費があがるため利益を押し下げる
一括償却処理をすれば耐久年数に関係なく、3年間で取得価額の全額を経費にすることができ、節税効果があることがメリットとしてあげられます。逆に経費が上がると利益が下がるので、銀行から融資を得たい場合などに不利に働いてしまう可能性もあります。
まとめ
複雑そうに見える確定申告ですが、きちんとおこなえば節税になります。事業が拡大していって事務処理が追いつかなくなったときは、費用がかかりますが税理士に頼るということもできるでしょう。いずれにしても事業主として、基本的な知識だけでも知っておくと良いですね。