近頃よく耳にする髪質改善。様々な考え方がありますが、その定義や考え方を解説します。さらに髪質改善で注目される酸熱トリートメントについて詳しく紹介していきます。
- 髪質改善について知りたい
- 髪質改善をメニューとして取り入れたい
- 髪質改善がどんな人に向いているのか知りたい
上記にあてはまる人は参考にしてみてください。
「髪質改善」は髪本来の美しさを取り戻すための施術

テレビ番組の紹介をきっかけに認知度を上げた「髪質改善」。美容師ならどのような技術を指しているのか疑問に思うことがあるでしょう。この言葉から連想される施術は大きく分けて2つ。
- クセ毛や硬毛など、髪本来が持つ質感をより扱いやすい状態に改善する施術…縮毛矯正やストレートパーマ
- ケアによって髪の質を良くし、ダメージ状態を改善する施術…トリートメント
上の施術はどちらも髪質改善であることに間違いありませんが、美容室の考え方によって施術内容や考え方は異なります。
このように髪質改善については美容室や美容師個人によっても様々な解釈や考え方・施術内容があり、一般論として「髪質改善はこうだ」とは言い切れません。そこでこの記事では髪質改善の施術を「酸熱トリートメント」と定義づけて、髪質改善について紹介します。なお、酸熱トリートメントについては後ほど詳しく説明します。
髪質改善トリートメントって何?
髪質改善のトリートメントは、通常のトリートメントとどのような違いがあるのでしょうか? ここでは髪質改善トリートメントについて解説していきます。
酸性の成分と熱を利用する「酸熱トリートメント」のこと

髪質改善トリートメントは「酸熱トリートメント」を指します。
カラーやパーマなどアルカリ剤で施術を受けた髪は、シスチン結合が断裂し、強度や保水力が低下してしまいます。通常のヘアトリートメントの多くは、シスチン結合が少なくなって隙間だらけになった毛髪内部に、ケラチンなどのPPTを詰め込んだり、開いたキューティクルを疑似キューティクルでコーティングして毛髪内部に残る栄養の流出を止めたりします。ただし効果の持続が難しく、わずか3週間~1ヵ月程度にとどまります。
対して、酸熱トリートメントは酸性のケア成分と熱で疑似的なシスチン結合を作り出し、髪内部を補修すると同時に強度や保水力を向上させます。
そしてダメージの原因であるアルカリを中和する、酸性ケア成分を用いることで、髪を健康な状態に近い疎水性に戻す効果も期待できるのが魅力。
酸熱トリートメントは従来の応急処置的なトリートメントと違い、髪を本来の健康な状態に戻す効果が期待できるメニューとして顧客へアプローチできる施術です。
グリオキシル酸の薬剤が主流
酸熱トリートメントの施術で使用される薬剤で最もメジャーな成分が「グリオキシル酸系薬剤」です。
酸性のグリオキシル酸は、熱を与えて水分を飛ばすことで、シスチン結合と似た結合が可能な物質。グリオキシル酸が疑似的なシスチン結合となり、髪を健康な状態に近い疎水性に近付けます。
広がりにくい、扱いやすい素直な髪質に改善

美容師目線で考えると、酸熱トリートメントの神髄は髪を疎水性に戻せる点ですが、その副産物として髪を扱いやすい状態にできる点が顧客からの支持を集めています。
グリオキシル酸を結合させる際、髪の水分を完全に抜くために180度以上の高熱が必要です。脱水施術を行うためにストレートアイロンで髪を加熱すると、ストレートの状態でグリオキシル酸が結合、少々のクセであれば還元剤を使わずにストレートヘアにできます。
縮毛矯正のようにタンパク質を固めている訳ではないので、髪は硬くならずブローやヘアアイロンなどでセットしやすいのが特徴です。
どれだけ髪の内部状態が健康でも、広がりやすく扱いにくい髪質は、顧客にとってダメージヘアと捉えられかねません。その点では、乾かしただけでも広がりにくい髪はまさに「質感が変わった」と実感できるもの。
髪内部の補修だけでなく、質感を変えて顧客満足度を高めることこそが、髪質改善の強みと高いリピーター率を誇るゆえんです。
ダメージヘアをなんとかしたい人や、これまでの施術に効果を感じなかった人、くせ毛の人におすすめの施術

酸熱トリートメントは以下のような悩みをもつ人におすすめの髪質改善メニューです。
- カラーやパーマで髪が傷んでいる人
- 縮毛矯正する程ではないが、広がるタイプのくせ毛を改善したい人
- 髪が乾燥してパサつきやすい人
- 普段のお手入れを楽にしたい人
- 髪にハリやコシが感じられなくなった人
- これまでトリートメントで効果を感じなかった人
クセ毛の改善や広がりを押さえる効果は、あくまで酸熱トリートメントの副産物。必ず改善される訳ではありませんが「縮毛矯正はしたくないけど、できるなら髪をストレートにしたい」人には挑戦してみる価値のある施術です。
美容師サイドは「酸熱トリートメントはあくまでダメージケアが目的。ストレートや縮毛矯正の施術ではない」ことを、必ず顧客が理解できるように説明した上で施術を行うと良いでしょう。
酸熱トリートメントの料金は1~2万円台
すでに酸熱トリートメントを導入済みの美容室では、1~2万円台でメニュー化している場合が多いようです。
材料費はもちろん、アイロンの工程が必要など、コストがかかるため、高額なメニュー設定が一般的。中には2万円以上の価格に設定している美容室もあります。
価格設定は美容室側のコストだけでなく、地域性や顧客のターゲット層によっても異なるため、一概に適正価格を出すことはできません。酸熱トリートメントを導入する際には、コスト・地域性・ターゲット層を考慮した価格設定が重要です。
酸熱トリートメントのギモンにこたえます
最後に酸熱トリートメントでよくある疑問について解説します。
効果の持続は1~3カ月程度

酸熱トリートメントの効果は基本的に1~3ヵ月程度と言われており、通常のトリートメントより長い持続期間が特徴です。
さらに回数を重ねるごとに髪質が良くなるとして、5ヵ月の間に3回の施術を推奨している美容室もあります。考え方は美容室によって異なるものの「回数を重ねるごとに髪質がよくなる」として複数回の施術を推奨し、顧客の求める髪質になった時点で施術は終了。髪の傷みが気になってきたら施術を再開するようアプローチする美容室が多いです。
酸熱トリートメントは施術方法や技術力、顧客のホームケアによっても持続期間が異なります。メーカーの推奨する施術方法をよく理解し、ホームケア方法を顧客に丁寧に説明することが持続期間を伸ばす秘訣です。
ホームケアはアウトバストリートメントがマスト

酸熱トリートメントのホームケアには「アウトバストリートメント」が欠かせません。
濡れた髪を保護して、ドライヤーからの熱ダメージを防ぐ基本のヘアケアが、髪内部を健康な状態に近付ける酸熱トリートメントにも必要です。酸熱トリートメントを施術した顧客には、髪質に適したアウトバストリートメントをすすめると良いでしょう。さらに持続効果を維持させたいなら酸熱トリートメント専用のヘアケア製品がおすすめです
カラーとの同時施術は計画的に
酸熱トリートメントとカラーの同時施術は避けましょう
酸熱トリートメントはカラー剤に含まれるアルカリと正反対の性質を持つため、同時に施術すると、定着しきっていない色素が流れ出て色落ちの原因になります。酸熱トリートメントの施術をする場合、カラー施術後の2週間は期間を空けるのがおすすめです。
カラーを定期的にしている人の場合、カラー周期の中に上手く酸熱トリートメントを取り入れることで色持ちも期待できます。
新しいトリートメント体験「髪質改善」で顧客満足度を上げよう

グリオキシル酸を使って髪本来の健康な状態を取り戻すトリートメントは、これまでのトリートメントに満足できなかった顧客にこそアプローチしたい施術です。酸熱トリートメントを導入して、髪質改善という新たなメニューで、顧客のファン化・新規顧客の獲得を目指しましょう。
