月々定額の動画配信や聴き放題、読み放題など、「サブスクリプション(サブスク)」と呼ばれるサービスが普及してきています。元々はソフトウェアやデジタルコンテンツの利用形態として多く見られたサービスですが、今ではモノやサービスの世界にも広がり、美容室にもサブスクサービスが登場しています。今回は、今後広がりを予感させる美容室サブスクの基礎知識の説明や代表的なサービスのご紹介をします。
美容室のサブスクってなに?
「美容室でサブスク」とは、どのようなサービスなのでしょうか。そもそもサブスクとはなにか、美容室ではどんなメニューを提供しているのか説明します。
サブスクとは
「サブスク」とは「サブスクリプション(Subscription)」の略語です。サブスクには予約購読や会費という意味があり、契約期間中の「継続利用」や「〇〇し放題」といったサービスのビジネスモデルのことです。
従来からある「定額制」と同義で扱われることが多いですが、細かくは次のような違いがあります。
- 定額制…定額料金の金額によって決められた商品やサービスの提供を受ける
- サブスクリプション…商品やサービスを一定条件のもと自由に利用・体験することができる権利に対して定額料金を支払い、モノの所有はしない
定額制の場合には、新聞や雑誌の定期購読や税理士顧問料などのように、一定期間決められた単一商品(サービス)の提供を受ける内容になります。それに対して、サブスクの場合には、音楽配信や動画配信、漫画読み放題、ファッションアイテム借り放題など、同じサービスの中でも利用・体験可能な商品が豊富で常に入れ替わりがあるサービスが多いです。
サブスクのビジネスモデルは、顧客が長期に渡って継続契約をしてくれるかどうかがサービス成功のカギとなるため、顧客満足度を重視したサービス改善に、より力を入れている傾向があります。
美容室のサブスクとは
以前はデジタルコンテンツサービスに多かったサブスクですが、最近ではリアルな生活にも浸透してきています。その流れは美容室も同様で、定額料金を支払うことで、美容室が利用できるサブスクが登場し、会員を増やしてきています。
美容室サブスクのメニューは、シャンプーやブロー、トリートメント、ヘッドスパ、前髪カットなど、短時間でさっとサービスを受けられるサブメニューに特化していることが多いです。
「大事な会食やデートの前にちょっときれいにしたい」「仕事帰りにリフレッシュしたい」といった使い方はもちろん、自分でやるより早くてきれいになることから「時短になる」という利用者の声もあるようです。
美容室がサブスクを導入するメリット
では、サブスクを導入することによって美容室にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
継続的な利用につながる
サブスクは、定額料金を月々支払って利用する会員サービスのため、利用者が「解約」のアクションをしない限り継続的に安定収入が見込めます。また、利用者にとっては多く利用した分だけお得感が増すサービスのため、サブスクを導入しない場合と比較するとお客様が美容室を訪れる頻度は多くなり、コミュニケーションの機会も増えます。
これまでは、リピートしてもらうことにコストをかけていたのが、安定収入を得た上でさらに利用頻度も高まると言えるのです。
空いている時間帯や人材を有効活用できる
サブスクで提供されるサービスメニューは、すでに説明したとおりシャンプーやブローなどのサブメニューがメインになります。こうしたサブメニューは、日頃からシャンプーやトリートメントなどの業務がメインとなる若手のスタイリストやアシスタントでも担当できるため、スタッフの空いている時間帯を有効活用し、稼働率を高めることも可能になります。
新規のお客様獲得につながる
美容室サブスクは、利用したい店舗を提携店の中から自由に選べたり、シャンプーやブローなど利用者にとって初めての店舗でも不安が少ないメニューから試せたりします。そのため、新しく行きつけの美容室を探している人とっては、有効な「美容室の探し方」になります。
また、顧客にとって通いやすい場所に立地した店舗であれば、サブスク期間中ずっと利用してもらえる可能性も高いです。こうして継続的なコミュニケーションをとることができるようになれば、リピーターとなる可能性もあるため、新規顧客獲得のための入口戦略にもなるのです。
代表的な美容室サブスクサービス5選
ここからは、美容室サブスクの代表的なサービスを5つ選んで、具体的なメニューや価格などのサービス内容をご紹介していきます。
MEZON
MEZON(メゾン)は、シャンプー・スタイリング、ヘアケアに特化し、2018年にサービスインした美容室サブスクサービスです。「日本サブスクリプションビジネス大賞2019」でシルバー賞を受賞。2021年1月現在、800店以上の提携店の中から好きな店舗を選んで利用することができます。
利用したい曜日やメニューによって4つのプランに分かれており、お試しプラン(2,500円〜)も用意されているので、体験後に有料会員になることも可能です。
<月額料金プラン>
- 16,000円:シャンプー・スタイリング通い放題(平日)
- 25,000円:シャンプー・スタイリング通い放題(全日)
- 25,000円:シャンプー・スタイリング通い放題(平日)+月2回ケア
- 33,000円:シャンプー・スタイリング通い放題(平日)+月4回ケア
※価格は全て税抜きです。
:ideal
大阪市にある美容室の:ideal(アイディール)は、通常メニューの他に定額制会員メニューを提供しています。プランによって、シャンプーとヘッドスパのベーシックな内容から、縮毛矯正や増毛エクステ、まつ毛エクステまで通い放題という、幅広いメニュー展開になっているのが特徴です。
<月額料金プラン>
- 会員登録料:2,000円
- 8,000円:healingコース(カット・トリートメント・ヘッドスパなど)
- 10,000円:basicコース(healingコース+カラー・スタイリング)
- 20,000円:premiumコース(basicコース+パーマ・デザインカラーなど)
- 28,000円:luxuryコース(premiumコース+シャンプーブロー・ヘアセット・縮毛矯正など)
- 48,000円:VIP コース(luxuryコース+ヘアエクステ・増毛エクステ・まつ毛エクステなど)
※価格は全て税抜きです。
Gentroom
身だしなみや清潔感を重視するオトナの男性向けメンズ美容室のGentroom(ジェントルーム)では、24歳以上の社会人限定で定額制サービスを提供しています。シャンプーやカットの他、シェービングや印象改善眉カット、フェイシャルケアなど、見た目の印象を大切にする仕事をしている男性には嬉しいコース内容です。なお、会員数には上限があるため、タイミングによっては既存会員の退会待ちとなっていることもあります。
<月額料金プラン>
- 13,000円:スタンダードコース(全日)
(カット・印象改善眉カットなど、平日のみ-1,000円、平日・日中のみ-2,000円) - 15,000円:Gentroomコース(全日)
(カット・シェービング・印象改善眉カットなど、平日のみ-1,000円、平日・日中のみ-2,000円) - 27,000円:エグゼクティブコース(全日)
(カット・印象改善眉カット・炭酸スキャルプヘッドスパ・フェイシャルスキンケアなど、平日のみ-2,000円、平日・日中のみ-4,000円)
※価格は全て税抜きです。
JETSET
JETSET(ジェットセット)は、シャンプー・ブロー専門の定額制サブスクメニューを提供している美容室です。アメリカLA発のシャンプー・ブロー専門店というスタイルは、創業当時日本では見られず、JETSETが初めてだったそう。創業者のジュリア・スポッツウッド氏が日本に来た際、シャンプー・ブロー専門店がなく、いつもの美容室で施術してもらうと時間もお金もかかってしまうことから日本で起業したという経緯があるそうです。
<月額料金プラン>
- 16,000円:SPEED(ドライヤー・アイロン)
- 23,000円:JETSETTER(シャンプー・ドライヤー)
- 32,000円:JETSETTER PRO(シャンプー・ドライヤー・アイロン)
- 上記の基本プランに追加して、アレンジ(500円)やとトリートメント(3,000円)などのオプションも追加することが可能
※価格は全て税抜きです。
Viday
Viday(ビデイ)とは、2020年にサービスを開始した日本初の定額制美容サロン通い放題サービスです。美容室・ネイル・エステ・リラクゼーション・パーソナルジムの5つのジャンルの中から好きなジャンルを選んで通い放題になるサービスで、月額料金によって3種類・4種類・5種類のジャンルが選べます。会員登録後、7日間は3ジャンル選択後に無料お試し期間があるので、納得してから利用することも可能です。
<月額料金プラン>
- 19,800円:3ジャンル通い放題
- 29,800円:4ジャンル通い放題
- 39,800円:5ジャンル通い放題
※価格は全て税抜きです。
サブスクを検討する際に考えたいこと
これからサブスクの導入を検討するのであれば、考えたいポイントは大きく3つあります。
まず1つ目は、提供するサービス内容についてです。サブスク利用者は、悩みの解消や時短などの「メリット」、リフレッシュなどの「新しい体験」、コストの「お得感」などさまざまな価値を求めています。始めようとするサービス内容が、顧客に対してこれらの価値を与えることができるのか、しっかりと考える必要があります。
次に、価格設定です。単に「定額制」にしてしまうと、競合との価格競争に陥ってしまいがちです。そこで、顧客ニーズに合わせたプランを複数用意して選択しやすくする、オプションを用意して単価を上げる、などの工夫をしましょう。
最後に、サービスの継続性です。継続性は、2つの視点で検討します。1つは顧客視点で考えて、競合店ではなく自社のサービスを継続利用するメリットが顧客にあるのかどうかです。もう1つは事業者の視点で、コストやスタッフのスキルを考慮したときに継続可能なのかどうかを検討しましょう。メニュー内容が顧客ニーズにマッチしていたとしても、スタッフのスキルが足りなければ継続的なサービス提供は難しくなるでしょう。
まとめ
美容室のサブスクは、顧客のニーズを満たしメリットを与え続けることができれば、事業者側にも継続的に安定収入をもたらしてくれる、Win-Winのサービスとなります。導入を検討する場合には、顧客視点と事業者としての視点でサービス内容を検討し、継続的に利用してもらえるような価値の提供をしつつ、単価を上げる工夫もしていきましょう。