美容室の必須アイテムである「椅子」。施術中のひとときを快適に過ごしてもらうためには、クッションの質や椅子の安定性など、お客様の座り心地を大切に考えて選びたいものです。椅子の昇降や清掃のしやすさといった機能面にも配慮して椅子を選べば、美容師が無理のない姿勢で存分に技術を発揮でき、お客様の満足度も高まるでしょう。美容室のムード作りの一環として、デザイン面のチェックも欠かせません。
本記事では、美容室が椅子にこだわるべき理由とともに、美容室の椅子を選ぶ際のチェックポイントや注意点を解説します。
美容室での椅子の座り心地は大切

お客様は施術中のほとんどの時間を椅子に座って過ごすため、椅子の座り心地が美容室の居心地に直結します。リラックスできる雰囲気がリピートの決め手になる場合もあるため、美容師の技術と同様に椅子の座り心地へのこだわりが大切です。
美容室で使われる椅子の重要性
美容室の施術で使われる椅子はセット椅子、あるいはスタイリングチェアと呼ばれています。お客様に快適な施術時間を提供するためには、長時間座っていても疲れにくいセット椅子選びが重要です。
美容室での施術時間はカットで1時間程度、パーマやカラーをプラスすると3~4時間座りっぱなしという場合もあります。施術中は自由な姿勢を取りづらいため、アームチェアやソファといった一般的な椅子ではお客様の疲労度を高めがちです。
1~2時間ほど座り直し動作ができない可能性があることと、椅子の座り心地が体格と深く関わることを考慮して、さまざまなお客様が快適に過ごせる構造のセット椅子を選ぶようにしましょう。
美容室が椅子にこだわるべき理由
セット椅子は美容室の中でも存在感が強いアイテムなので、セット椅子のデザイン次第で美容室の雰囲気が決まるといっても過言ではありません。といっても、お客様がゆったりと座れて美容室で満ち足りたひとときを過ごせることが、セット椅子に求められる第一条件です。
お客様にとって優れたセット椅子でも、美容師の動きに支障が生じる構造だと美容師の作業効率を下げてしまいます。経営目線では回転率が低下したり、施術のストレスが原因の離職につながったりする懸念もあります。
美容師が自然な動きで施術ができるどうかも、セット椅子を選ぶ重要なポイントです。
セット椅子の種類

セット椅子の種類は、電動式のセット椅子と足踏み式のセット椅子の2つに分けられます。チェアベースも置き式と固定式が提供されています。美容師の作業効率に着目した上で、それぞれのメリット・デメリットをチェックしておきましょう。
電動式のセット椅子
電動のセット椅子はボタン操作で昇降できるため、美容師の負担が少ないのがメリットです。上昇時の動作がスムーズで振動が少なく、お客様の快適性を損ねずにすみます。サービスコンセントが付いていれば、ドライヤーなどの電源コードの取り回しも楽でしょう。
一方、セット椅子用の電源が必要となるのがデメリットです。床上に配線すると、配線モールの突起でワゴンの動きに制約が生じて美容師の作業効率に影響するため、工事費用がかかっても床面コンセントの設置が得策といえます。充電式のセット椅子だと電源工事が不要ですが、充電忘れには要注意です。
足踏み式のセット椅子
足踏み式のセット椅子は種類が豊富で、お店の雰囲気に合わせて椅子を選びやすいのがメリットです。チェアベースも丸形・5本足・フロート式から選べます。電源工事が不要で椅子自体の価格が安いのも特徴です。
その反面、ペダルを踏み込む動作によって美容師の足腰への負担がかかりやすいのがデメリットです。1日の接客人数が多ければペダルを踏み込む回数も増えて、疲労度も増します。お客様によっては、セット椅子の上昇する際の振動への配慮も必要でしょう。
美容室の椅子を選ぶポイント

セット椅子を選ぶ際に確認しておきたい、4つのポイントについて説明します。お客様が快適に施術を受けられるムードづくりと、美容師が効率的かつ安全に施術できる環境づくりという両方の目線が大切です。
デザイン性
セット椅子の形状や色が美容室のインテリアを作る要素となるため、美容室のコンセプトや店内の雰囲気に合わせてセット椅子を選ぶことが大切です。ホームページやSNS・インスタグラムで店内画像を紹介するケースが増えているため、セット椅子そのものが販促ツールとして機能することを念頭に置く必要もあります。
表皮の素材や光沢・模様の有無、そして色使いのバリエーションは豊富で、内装と組み合わせてさまざまな雰囲気を演出可能です。肘掛け(アームレスト)の素材もレザー張り・木製・プラスチック製から選択でき、大きさや形状でカジュアル感あるいは重厚感のあるシルエットを作り出せます。チェアベースの形状や塗装方法(ツヤあり・ツヤ消し)も、床面の素材や色を考えながら選ぶとよいでしょう。
機能性
機能面で何よりも重視したいのが、お客様の座り心地に直接かかわる背もたれや座面のクッションの品質です。クッションの品質が悪いと長時間の着座に耐えられず、お客様に疲れを感じさせてしまいます。肩こりや腰痛を患っているお客様にとっては症状の悪化が気がかりで、クレームの一因になる懸念もあります。高密度ウレタン、あるいは低反発素材が選択肢となるでしょう。レッグレスト付きのセット椅子だと、さらに快適性が高まります。
お客様の快適性と同時に、美容師の使い勝手への配慮も必要です。背もたれの厚みや椅子の形状・装飾によっては無理な姿勢でのカットを余儀なくされ、施術のクオリティにも影響する懸念もあります。美容師が施術しやすい環境を作るためにも、回転機能の有無や高さの調節範囲にも気を配ってセット椅子を選びましょう。座面と椅子の間に髪が入りづらい構造なら清掃もしやすく、いつも清潔な状態でお客様を迎えられます。
安全性や耐久性
セット椅子にはさまざまな体重・体格のお客様が長時間着席し、昇降・回転の動作も多めです。そのため、安全性や耐久性を十分に考えてセット椅子を選ぶことがお客様・美容師双方の安心につながります。
椅子をスムーズに昇降・回転でき、固定すべき場面では確実にロックできるかどうかが、安全面に関する主なチェック項目です。座面だけでなく背もたれ・肘掛けに体重がかかるため、椅子のフレームや油圧部分などの耐久性に問題がないかどうかも確認する必要があります。
セット椅子の品質管理が徹底しているかどうか、厳しい検査をパスして出荷されているかどうかも、椅子のメーカーを選ぶ段階で確認しておきましょう。
メンテナンス性
セット椅子を長く安全に使い続けるためには、定期的なメンテナンスが必須です。
表皮部分の清掃や手入れが不十分だと、座面や背もたれが硬くなったりひび割れたりして、座り心地やクッション性が悪くなってしまいます。金属部分に付いたホコリを放置すると拭き取りでは取れにくくなり、サビの原因になるなど美観も損なわれます。
セット椅子を選ぶ際にメンテナンスをしやすい素材にこだわることも大切なポイントです。美容室スタッフによるメンテナンスが難しい場合は、メーカーに保守点検を依頼してもよいでしょう。
中古でセット椅子を購入する場合の注意点

中古のセット椅子は新品と比べて低価格なのが魅力ですが、先述した椅子選びのポイントに加えて椅子の劣化状態にも注意が必要です。初期不良の可能性を考えて、保証が付いている商品を選ぶと安心でしょう。
中古品の購入を検討する際は、使用期間や傷・汚れの状態を十分に確認します。安全性にかかわる椅子の昇降・回転機構部については、経年劣化に伴うダメージの状況についても慎重な確認が必要です。美容室のイメージに影響を及ぼさないよう、新品に引けを取らない美観かどうかや外見・内部構造の衛生面もチェックしましょう。
品質管理の観点から中古製品のサポートに制約を設けるメーカーもあるため、中古購入に少しでも不安がある場合には新品の購入を検討するのが得策といえます。
まとめ
お客様・美容師双方にとって快適な美容室を作るためには、セット椅子の選び方が大切です。安全性はもちろん、クッションの品質に代表される座り心地の良さや、昇降・回転操作のしやすさといった美容師にとっての使い勝手など、チェック項目は多岐にわたります。セット椅子の存在そのものが美容室の雰囲気を作り出すことへの意識も必要です。
顧客のリピート率と美容師の定着率を同時に向上できる可能性を秘めているため、セット椅子選びを経営戦略の一つとして位置づけることもできます。
