いつの時代も男子が憧れる漫画主人公は、言うまでもなく「強いオトコ」。
メジャーどころでは『ドラゴンボール』『ONE PIECE』のように人間離れした能力を操るヒーロー像がありますが、もう1つの路線として『はじめの一歩』『修羅の門』といったリアルな技だけで戦う主人公の活躍も燃えますよね。

今回はそんなリアル系の格闘技漫画から、電子コミック化された往年の傑作『陣内流柔術武闘伝 真島クンすっとばす!!』をご紹介させていただきます！

主人公の真島 零は、ちょっとお人好しで女の子に弱い、底抜けにポジティブな性格の高校1年生。いっぽうで武器を持った不良集団くらい軽く倒してしまえるケンカの達人なのですが、それもそのはず。なんと彼は戦国時代から続く伝説の古武術「陣内流柔術」の継承者だったのです。世界最強の格闘家になりたい！という大きな夢を抱き、さまざまな格闘技イベントに挑む真島くん。その前に立ちはだかるのは、空手や柔道、ボクシング、テコンドー、ムエタイなどの猛者たち。果たして若き熱血少年はライバルに打ち勝って最強の称号を手に入れられるのか……!?

こんな感じにシンプルなストーリーで、真島くんが夢に向かってひたすら突き進む本作。作者が格闘技に詳しいだけあって、マニアックで痛快な肉弾アクションが楽しめます。

なんといっても最大の見どころは、主人公が操る陣内流柔術の強さと奥深さでしょう。実在する柳生心眼流という武術がモデルになっていて、打撃・投げ・関節技すべてを備えた、現代でいうところの総合格闘技として描かれています。

特に中指の第二関節で敵の急所を撃ち抜く特殊なパンチ「鉄菱」は陣内流のトレードマークで、ビジュアル的なカッコよさも最高！ 本作をリアルタイムで読んだ1990年代のジャンプ少年たちは、結構みんな鉄菱の握り方をマネしようとした経験があると思います。最近のトレンドにたとえると『鬼滅の刃』に出てきた「水の呼吸」の型をマネするような感じでしょうか。

鉄菱のほかにも、両腕を封じて脳天から叩きつける投げ技「雷車」、敵の内臓に直接ダメージを与える秘伝「千人殺」など、古流ならではのエゲツない必殺技が次々に登場。たいていのライバル格闘家たちは真島くんより実力もキャリアも格上なのですが、ここぞというシーンで繰り出された陣内流の奥義が逆転のカギになる展開は、今になっても読んでいてゾクゾクします！

古流柔術という「過去の技」で、最強格闘家になりたいという「未来の夢」を切りひらく、そんな主人公の勇姿に感動しない人はいないのではないでしょうか。
ハイレベルな画力、派手な必殺技の応酬、格闘家の意地と意地がぶつかり合う白熱のシリアス展開、そんな中でもあちこちに挟み込まれる作者お得意のギャグシーンなど、全編にわたって見どころがいっぱいです。

ちなみに若干ネタバレになりますが『真島クンすっとばす!!』だけではストーリーが完結しておらず、現在は続編『陣内流柔術流浪伝 真島、爆ぜる!!』が別の出版社から刊行中です。続編のほうは少年誌でなくなったためか流血とお色気シーンがやや強化されていて、オカルトやミステリー要素も入ってくるので読者を選ぶかもしれません。

ですが初代『真島クンすっとばす!!』は文句なしにカタルシス満載の熱血アクション！ ぜひこの機会に読んでみてほしいと思います！