美容室の経営者は、スタッフが入社したさいに各所へ届け出をする必要があります。さらに入社手続きはスタッフに提出してもらう書類もあるため、事前に基本的なことをひと通り把握しておくのが大切です。今回は手続きの流れや具体的な方法をわかりやすく解説していきます。
保健所でおこなう手続き

従業員変更届の提出
スタッフを美容室で新たに雇用するときは、「従業員変更届」に必要事項を記入して保健所に提出しなければいけません。そのさいに美容師免許証や診断書など、必要な持ち物があるので忘れないようにしましょう。お店の代表者以外が提出する場合は、代表者の印鑑と美容所確認済証が必要となります。
診断書は近隣の病院やクリニック、診療所などで検査をおこない医師に発行してもらいます。有効期限を定めている保健所もあるので、取得したら早めに手続きするようにします。あとはスタッフが所持する美容師免許証のコピーを求められるため、事前にコピーしておくか持っていくといいでしょう。
労働保険の加入について

労働保険の加入条件
1週間の労働時間が20時間以上、31日以上雇用される見込みのあるスタッフなど、該当する場合に従業員は労働保険(労災保険、雇用保険)に必ず加入しなければいけません。
労災保険
労災保険はスタッフが1人の場合でも強制加入となります。スタッフを雇用するときは労災保険の加入手続きをしましょう。労災保険への加入は労働基準監督署に、労働関係設立届、労働保険概算保険料申告書を提出します。
労働関係設立届の提出期限は、保険関係の設立した日の翌日から起算して10日以内とされていますので、早めに提出するようにしましょう。労災保険に加入するさいには、会社の登記簿謄本や賃貸借契約書、労働保険概算保険料申告書などの書類が複数必要となります。事前にどのような書類が必要か調べておきましょう。
雇用保険
雇用保険は所轄のハローワークに必要書類を提出します。労働者名簿や雇用保険に関する書類、登記事項証明書などたくさんの資料が求められるため、入念なチェックは欠かせません。
スタッフを雇用するたびに加入手続きが必要
労働保険は新しくスタッフを雇うたびにハローワークで手続きをする必要があります。基本的に事業主が書類の管理をして、辞めるときに雇用保険被保険者証をスタッフに返却することが多いです。
美容室が社会保険に加入している場合
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届の提出
社会保険に加入している場合は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を年金事務局や事務センターなどに提出することで加入できます。提出期限は、資格取得から5日以内なので早めの準備が必要です。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を1枚提出すれば、健康保険と厚生年金保険の両方の手続きが完了します。保険組合などに加入している場合は、保険組合での加入手続きが必要なことがあります。
税務署でおこなう手続き

給与支払事務所等の開設届出書の提出
法人で初めて従業員を雇うときは、税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しなければいけません。給与支払事務所等の開設届出書とは、自分の美容室でスタッフを雇い始めたことを税務署に把握してもらうため出す書類です。他にも家族に青色事業専従者で給与を支払う場合や、法人で社長に給与を払う場合にも提出が必要です。
また、個人事業主は開業届出書に記入欄があるため、開業時からスタッフを雇う場合は提出の必要はありません。途中から雇う場合には提出が必要となります。給与支払事務所等の開設届出書は「給与を支払うことが決定して(雇用して)から1ヶ月以内」にできるだけ提出するようにしましょう。
住民税について
住民税は事業主が毎月の給与から天引きして納付する、特別徴収をおこなうことが義務付けられています。基本的にスタッフが特別徴収を拒否しても、普通徴収に戻すことはできません。ただし、スタッフが2人以下、給与が少なく税額が引けない場合や、給与が毎月の支払いでないなど不定期の支払い、といった項目に該当する場合は、普通徴収にすることができます。その他にも該当する項目がありますので、詳しくは役所に問い合わせてください。
特別徴収に切り替える手続き
特別徴収は雇用形態に関係なく、4月1日現在で会社から給与の支払いを受けているスタッフや、前年に給与の支給を受けているスタッフが対象となります。普通徴収から特別徴収への切り替えは「特別徴収切替届出書」を各自治体の税務課などに提出します。
特別徴収の納付方法
住民税は基本的に年末調整で出された「給与所得の源泉徴収票」をもとに算出されているため、事業主が手続きをする必要はありません。毎年6月に住民税決定通知書が届くので、毎月その金額をスタッフの給与から差し引いて事業主が納付するという流れです。
労働条件通知書兼雇用契約書
正社員のスタッフだけではなく、契約社員やパート、アルバイトのスタッフにも必要な書類です。美容室オーナーとスタッフが合意すれば、その間には雇用関係が成り立つからです。
労働条件通知書兼雇用契約書とは、働くうえでの条件を細かく記した契約書のことで、トラブルを防ぐためにも必ず事前に準備しておきましょう。労働条件通知書兼雇用契約書の内容は、おもに勤務時間、休憩時間、休日、休暇、給与や支払日についての項目を明記します。
誓約書を定めている場合も明示が必要
誓約書とはお店と従業員の間で交わす約束事が書かれた書類のことです。誓約書は2部作成して、お店側と従業員側で保有することが一般的です。
お客様の個人情報を取り扱っている美容室にとって「お客様の個人情報の取り扱い」についてきちんと誓約書にサインしてもらうことが重要です。他にも従業員が独立するさいに引き抜きを防止するための「競業避止」など、禁止事項を決めておくようにしましょう。
入社時に提出してもらう書類を忘れずに!
入社時にはスタッフに美容師免許証、給与振込先の口座など必要な書類を提出してもらいます。お店によって提出してもらう書類は変わってくると思いますので、抜けが生じないようにチェックリストを作成しておくといいでしょう。
まとめ
入社手続きは細かい書類などたくさんの手続きがあって慣れるまで大変ですが、役所の担当の方に聞けば丁寧に教えてくれるので、確認しながら進めるようにしましょう。これらの手続きはスタッフが入社するたび必要になるため、一度マニュアルなどを作ってしまえば、あとあと楽になりますよ。お店側もスタッフ側もお互い気持ち良く付き合っていけるよう、スムーズな入社手続きを目指しましょう。
