みなさんは『千夜一夜物語』をご存知でしょうか？
「アラビアン・ナイト」の中のシンドバードやアラジン、アリババの物語と言えば、多少覚えがある方もいるかも知れませんね。

ことの始まりは大昔のペルシア、シャハリヤール王の妻（妃）による裏切りでした。王は不貞をはたらいた妃を殺しただけに飽きたらず、毎夜一人の乙女を連れてこさせて、一夜をともにした翌朝にその娘の首をはねるようになりました。
王の蛮行はいっこうに終わることなく、とうとう国中の乙女が殺し尽くされそうになったほど。

そこで手をあげたのが、大臣の娘のシャハラザードです。彼女は王のもとへ嫁いで「面白い話を聞かせる」と言って、毎夜さまざまな物語を語って聞かせます。稀代の話し上手である彼女に王は惹き込まれ、物語の続きを聞きたいためにシャハラザードは生かされ続けます。まさにそうやって王の暴挙を止めるのが彼女の狙いだったわけですね。

本作のなかでシャハラザードが語ったお話は3つ。

魔物に猿にされるも、何とか得意の書を披露して人間に戻る王子。
船から投げ出されて命からがら生き延びるシンドバード。
魔法を使う女に腰から下を大理石に変えられ、動けない美しい王子。
どの作品もシャハリヤール王の気を引くと同時に、読者をも魅了します。

『千夜一夜物語』は文字通り千一の夜の間、シャハラザードが恐ろしい王に時には悲しく、時にはワクワクする物語を語るものです。しかし、千一夜も話し続けると、さすがに語る物語も尽きてしまいます。
その最後の夜に、シャハリヤール王がとった行動は、愛情に満ちていました。

王は元妃に不貞をはたらかれ、女性不信になっていたのかもしれません。
本当はともに寄り添ってくれる女性を求めていたのかも知れません。
そして、シャハラザードはそれに気付いていたのでしょう。

物語の内容も興味深く、予備知識がなくても十分楽しめます。これを機に『千夜一夜物語』の読破に挑戦してみるのもおもしろいのではないでしょうか？
参考文献も掲載されていますので、好きなものを選ぶといいでしょう。

男女の裏切りや惹かれ合い、魔物や怪物の登場など、非常に興味をひかれます。
しかし、魔物や怪物よりも、人間の方が恐ろしいものだと改めて実感させられたりもするでしょう。
男性も女性も美しく、魔性の女は妖しく描かれています。
文学的な要素のある漫画をお求めの読者には、きっと満足できるはずですよ。