美容室の集客アップを目指す上で、商圏やサービス内容などの現状分析は必要不可欠です。現状分析の方法はさまざまですが、マーケティング手法の一つである「4P分析」が多く活用されています。お客様のニーズを意識しながらサービス内容を絶えず見直していくことが、美容室の経営を成功させる上では大切です。
今回は美容室にとっての「4P」は何かを確認しながら、具体的な分析手法について解説します。
4P分析とは

4P分析とはマーケティングミックスと呼ばれる分析手法の一つで、商品・サービスの開発や価格設定といった営業戦略の立案を効果的に進めるツールとして用いられます。4P分析を行う前に、ターゲットとする市場の絞り込みやビジネス環境の分析を行うのが一般的です。美容室に置き換えると、店舗コンセプトの確立・ターゲットとする顧客の選定や競合店対策の検討が該当するでしょう。ちなみに「4P」は、次の英単語の頭文字から取られたものです。
Product(製品) | 利益の源泉となる商品・サービス |
Price(価格) | 顧客層を考慮した価格設定 |
Place(流通) | 商品・サービスの提供方法 |
Promotion(販売促進) | 販売経路の確立と認知度の向上 |
商品・サービスの内容に合った価格を設定することで、来店する客層がある程度決まります。お客様が「払ってもいい」と思える価格か、価格設定により商品価値を損ねないかなど、バランス感覚のある判断が求められます。顧客層や年代に応じて宣伝媒体を組み合わせたり、顧客の満足につながる店舗のムードを作ったりするためにも、多面的な分析が大切です。
美容室における4Pの意味

美容室にとって、4Pにはどのような意味があるのでしょうか。美容室の強みを具体化できるよう、4P分析の要素を具体的に説明します。
Product(プロダクト:製品)
プロダクトは顧客に販売する製品や商品のことをいい、形として目に見えない情報やサービスも含まれます。美容室ではカットやパーマ・ヘアカラーといった施術メニューが代表的なプロダクトです。ヘアケア商品・化粧品など店販商品のラインナップやカウンセリング、さらには美容室のムードそのものも「サービス」という商材としてアピールできます。
お客様が美容室に何を求めているか、あるいは希望を満たす施術メニューやサービスは何かをきめ細かく分析します。美容室としてお客様にどんなサービスを提供するか、あるいは施術メニューやサービスで自慢できるものは何か、という視点で考えると分かりやすいでしょう。他の美容室にはない個性を打ち出し、差別化につなげることも重要です。
Price(プライス:価格)
プライスは施術メニューや付帯サービス・店販商品への価格設定のことをいい、お客様にとっては美容室の価値を客観的に判断する材料となります。店販商品の場合は希望小売価格や参考小売価格に合わせて価格を設定しますが、サービスに対する値付けは自由です。価格設定ひとつで美容室のブランド力をコントロールできるといっても過言ではありません。
美容室の利益を出すことを前提に、価格を決めた根拠をお客様に説明できるか、そしてお客様に満足してもらえるかについて検討します。他店の価格と比べながら、自店のセールスポイントや価格の優位性を分析することも大切です。
Place(プレイス:流通)
プレイスは商品・サービスの流通経路のことをいい、美容室の場合は出店場所、すなわち立地条件です。開店当時は優れた立地条件だったとしても、周辺環境の変化に伴い集客力が伸びたり、反対に落ちたりすることが考えられます。競合店が出現した場合には、客層やニーズの変化に対応するなど既存客の流出を阻止しなければなりません。
美容室の立地条件がサービス内容や価格帯に合っているのか、競合店の数やコンセプト・集客状況についても分析しましょう。新規に出店する場合は、立地条件がお客様にどんなインパクトをもたらすかについても検討が必要です。
Promotion(プロモーション:販売促進)
プロモーションは商品・サービスの魅力を視覚や聴覚に訴えて購買意欲を高める行動のことをいい、美容室では集客活動をさします。オンラインでの集客活動は、美容室予約サイトへの掲載やSNS・美容室公式サイトによる情報提供が主流です。美容室はリアル店舗で営業しているため、ショップカードやチラシ・店頭POPによるオフラインの集客方法も活用できます。
客層やサービス内容・出店場所に合った集客方法を分析し、効果的な広告宣伝方法を検討しましょう。クーポンで集客を行う場合は価格への関心が高まる反面、サービス価値への印象が薄れる可能性がある点に留意が必要です。
4P分析の進め方

集客アップにつながる新たな施策を打ち出すには、自店の強みと課題を明確化しておくことが大切です。優先順位を考えながら、4P分析を進めましょう。
4P分析をする時の優先順位
美容室が4P分析を行う場合、既存店と新規店では優先順位が変わります。既存店での分析の優先順位は次のとおりです。
- Product(プロダクト)
サービス内容や店舗の内装・ムードづくり、店販商品のラインナップなど - Price(プライス)
施術メニューや付帯サービス・店販商品の価格の妥当性 - Place(プレイス)
美容室の出店場所・立地環境 - Promotion(プロモーション)
集客方法
一方、新規店が4P分析を行う場合はPlace(プレイス)が最上位に変わります。立地条件や競合状況によって、美容室のコンセプト戦略が変わりうるからです。技術力やサービス力をお客様に訴求できるよう、価格への依存は避けるのが無難でしょう。
4Pにもとづく現状分析を行う
自分の店舗が持つ「4つのP」を細かく洗い出し、現状分析を行います。美容室の最新動向や思いついたアイディア、自店にはない競合店の強みも分析内容に盛り込みましょう。
4Pの項目に矛盾点がないかを確認する
洗い出した項目に矛盾点がないかを確認し、矛盾点が見つかった場合は修正・改善を行います。例えば、客単価を上げたいのに割引率の高いクーポンを用意している場合には、クーポンの内容見直しや廃止を検討します。
Pの組み合わせをして施策を考える
矛盾点の修正が済んだら「プロダクトを訴求するプロモーション」あるいは「高いプライスでも自店を利用したくなるプロダクト」というように、2つ以上の「P」を組み合わせて新たな施策を打ち出しましょう。
4P分析を行う際のポイント
4P分析を効果的に進めるためのポイントを紹介します。
すべての要素を4Pに盛り込む
4Pの要素は相互に関連しているため、要素の分析が1つでも不十分だと他の要素にも影響し、施策実行の効果が出ません。例えば、提供メニューの利益率を改善しても広告費用が高額になれば、新しい施策の意味がなくなってしまいます。要素間のバランスも考慮しながら、すべての要素を4Pに盛り込むことが大切です。
お客様のニーズを軸に考える
4P分析を進める際は、お客様のニーズを軸に考えましょう。自店のコンセプトを打ち出すのは大切ですが、お客様に選ばれなければ売上につながらないからです。「自分が顧客だったら、自分の美容室を使いたくなるか」というように、美容室・経営者の視点だけでなく、お客様の判断基準に対する意識も必要です。
4C分析についても意識する
4P分析は売り手(美容室)主導で行うマーケティング手法ですが、買い手(顧客)目線で行う「4C分析」もあります。4Cの具体的な内容は、次のとおりです。
4Cの内容 | 4Pに対応する項目 |
Customer Value(顧客価値) | Product(商品・サービス) |
Cost(コスト) | Price(価格) |
Convenience(利便性) | Place(流通) |
Communication(コミュニケーション) | Promotion(広告宣伝) |
4Cと4P双方の視点を意識することで、きめ細かな現状分析を行えます。お客様の立場になって、4つの要素について検討しましょう。顧客へのアンケート調査を行うのも一つの方法です。
まとめ
美容室の差別化を進めながら集客力を高めるためには、きめ細かな現状分析が大切です。集客力が高まれば固定客も増え、コンスタントに利益を出して長期にわたり店舗運営を続けられます。美容室のコンセプトや客層に合った宣伝を行い、新規客の認知度を上げる取り組みも必須です。サービス内容を十分に練り上げることが競合店との価格競争による店舗・スタッフの疲弊を防ぎ、経営面でも有利に働くでしょう。
