美容師は人気が高い職業なのと同時に、勤務時間が長く接客業であるためハードな仕事と言われています。そんな中でお客様に満足いただけるサービスを提供するには、休憩時間の取り方が大きなポイントとなるでしょう。今回は美容師の休憩実態、法律上の「休憩時間」の扱い、休憩が取れない場合にどんな選択肢があるか、などについてご紹介します。
まずは知っておきたい労働基準法
まずは美容室の休憩時間を考えるうえで基本になる「労働基準法」について知っておきましょう。勤務時間は、原則1週間40時間で1日8時間となっています。そして、休憩時間は労働時間が6〜8時間以下であれば45分程度の休憩を取り、8時間以上の労働であれば1時間ほどの休憩が必要になります。
このように労働基準法では働く時間に応じて休憩を取る時間も設定されているので、職種に限らず守る必要があります。ちなみに「休憩時間」とは、労働から離れている時間を指すので、電話や来客対応をした場合は業務とみなされ勤務時間になります。これらによって従業員が休憩を取れなかった場合、経営者は別に休憩時間を与えなくてはなりません。
実際の美容師の休憩時間は?
労働基準法によって美容師の休憩時間は決まっていますが、実際に法律通りの休憩時間を取ることができているのでしょうか?
スタイリストの場合は基本的にまとまった時間に休憩することはできません。お客様がいない時間に休憩する程度で、お客様が途切れないなら休憩も取れないというケースがあります。アシスタントは平日であれば30分の休憩をもらえる店舗もあるようですが、休憩なしとしている店舗も多く、休憩時間をまとめて取ることは難しくなっています。
スタイリスト
スタイリストは上述したとおり、基本的にまとまった休憩時間が取りにくいため、ほぼ1日中仕事をし続けるという状況も覚悟しておいた方がいいです。少し隙間時間ができれば休みを取れる程度であり、食事もしっかり時間が確約されているわけではなく、何かをつまんで食事補給する程度のようです。また、業務時間外でも夜遅くまでスタイリング練習があるなど、美容室の方針にもよりますがハードな勤務状況となっています。
アシスタント
アシスタントの場合は早くスキルを習得する必要があるので、休憩時間をもらうことはできても、その時間を練習に費やす人が多いようです。そのため名目上は休憩となっていても、ゆっくり食事を取る時間やスマホを見てリラックスする時間は少ないと言えるでしょう。
休憩? 勤務時間? そもそもの休憩時間の考え方
休憩時間の考え方は「労働をしていない時間」であり、労働から離れていることが保障されていなければなりません。勤務時間と休憩時間の基準を理解しておけば、どんな状況でも労働しているのか休憩しているのか判断することができるでしょう。
残業中にも休憩時間は取れるの?
残業している間は「休憩時間を取ることはできるの?」と疑問に感じる人もいるでしょう。残業中の休憩時間については、会社の就業規則によってそれぞれ違います。ただ、労働基準法で定められた時間を超える場合は休憩を従業員に与える必要があります。たとえば通常業務で6時間働いてから残業をするなら、6時間以上の仕事をすることになるので45分以上の休憩時間を取らなくてはなりません。
パートやアルバイトの場合の休憩時間は?
美容室ではパート、アルバイトとして働いている従業員もいます。その場合の休憩時間についても知っておきたいところです。基本的に正社員であってもパートやアルバイトであっても労働基準法に定められた時間を守る必要があります。
6時間以下の場合は休憩が必要ではなくても、6時間を超えそうな場合は45分以上の休憩が必要になります。パートやアルバイトも休憩を取れるということです。
手待ち時間は休憩に入る?
美容室にかぎりませんが接客・サービス業には「手待ち時間」というものがあります。これは、お客様を待っている時間であり、美容師としての作業をしていない状態なので、経営者によっては休憩とカウントすることもあります。
しかし、法律では休憩時間は「労務の提供から完全に離れた状態」と定めており、手待ち時間はお客様に対応するための時間なので休憩時間に入りません。そのため、お客様が少ないときは休憩に入ってもらいましょう。
休憩時間がない! そんな状況から抜け出すには?
美容室はスタッフの休憩が取りにくい労働環境だと紹介してきましたが、休憩時間は効率の良い仕事をするために欠かせないものです。そのため、労働環境の整った美容室を選ぶことが大事といえるでしょう。全国的に「働き方改革」が進められていくなか、従業員のことを考えている経営者の美容室では、労働基準法を守るために勤務体制を整えるところも出てきました。
休憩が取れるように昼食時間は美容室を一時的に閉めているお店、また多くのパートを雇って労働時間の調整をしやすくしているお店もあります。休憩ができず困っている美容師の方は、そのような美容室へ就職・転職することも選択肢になるでしょう。
フリーランス美容師として働く
美容師として休憩時間や自分の時間を確保したいなら、フリーランスとして働くこともお勧めできます。フリーランスは1つの美容室に縛られることなく必要な場所で仕事をすることができ、また仕事の時間や計画も自分で決めることができます。
さらに、業務委託、面貸し、シェアサロンなどで新規顧客の獲得が成功するなら、美容室の従業員として働くより短時間で大きな収入を得ることもできます。フリーランスの美容師として働くためにはスキルが求められますが、自分のペースで働きながら収入を確保できるので、最近はフリーランスに転身している人も増えています。
まとめ
美容室スタッフは休憩時間を取ることが難しいとされていますが、労働基準法では業種に関係なく、労働時間によって必要な休憩を与えるように定められています。もし、現在勤めている美容室が十分に休憩を取れず激務に耐えられないと感じたら、労働環境が整っている美容室への転職、またはフリーランスの転身を考えることも大事です。美容師の仕事が好きで長く続けていきたいのであれば、この機会に働き方について再度検討してみるといいでしょう。