美容師になってキャリアを積んでくると、お店の運営に関わりたいと店長を目指す方もいるのではないでしょうか。店長はとてもやりがいのある仕事ですが、スタイリストのころと比べるとまた違った大変さや責任を抱えなくてはならずに悩んでしまうこともあります。
ただ漠然と店長を目指すのではなく、メリットだけでなくデメリットもきちんと理解して必要なスキルを身につけていきましょう。今回は美容室の店長の仕事や役割、必要とされる能力などについて詳しく紹介していきます。
美容室の店長になるメリットとデメリット

店長になるメリット
店長のメリットは、なんといってもお店の経営側にまわれることです。スタイリスト時代とは違って、経営という大きな責任を担うことになりますが、そのぶん収入面でも大きな変化があります。そのため一定の年齢になったり、家庭を持ったりすると店長職への関心が高まってくるかもしれません。
店長になる主なルートとしては、自分で美容室を開業するか、チェーン店でオーナーなどに指名されるかがあります。後者の場合は、オーナーや周りのスタッフから信頼と好感をもたれていることになりますので、大きな自信が得られるでしょう。
店長になるデメリット
デメリットとしては、責任の重さが第一になります。店長になればスタイリストとして働いていた時とは状況が一変し、お店でトラブルが起きたさいには責任を取る立場です。そして売上を伸ばせなければ、お店の経営をマイナスにしてしまうというプレッシャーとも闘いながら日々仕事をこなすことになります。
またお客様も自分のお得意様だけでなく、お店全体のお客様に気を配る必要が出てきますし、スタッフ同士の人間関係を良好に保つために、すべてを円滑に進めていく心がまえが必要となります。

店長の仕事と役割

経営管理
お店によっては店長が経営管理をまかされるため、売上状況を常に把握する必要があります。売上が伸び悩んでいるとき、どんな改善策を打ち出すのかも店長の大事な仕事です。メニューの改善、集客手段の工夫、予算はどれくらいか、など細かなところまで考えることになるので、経営に関して理解や知識がないと大変かもしれません。

スタッフ管理
一緒に働いている従業員のスケジュール管理やサポートも大事な業務です。新人のスタッフを雇った場合は、お店の方針を理解してもらったり、接客や技術面で指導が必要なスタッフには徹底してスキルをあげてもらったりするなど、人材育成にも力を注いでいかなくてはいけません。また、美容師は離職率が高い職業でもありますので、長く働いてもらえるような環境づくりも店長の役目だと言えます。

顧客管理
店長はお客様にお店の良さを伝え、新規顧客の獲得、常連様のキープにも気を配ることになります。お客様の増減は売上に直接影響してきますので、どのようなサービスをおこなえばお客様を満足させられるかを常に考えていきましょう。今はインターネット普及によって集客方法の選択肢が増えてきたこともあり、ターゲット層に応じてどれが効果的かを見極めるのも店長の判断にゆだねられます。

良いお店をつくるために店長に必要なもの

1. リーダーとしての自覚
「お店のリーダーになるのだ」という自覚をもっていないと誰もついてきません。スタイリスト時代とは違い、店長はお店の顔であり働くスタッフたちの代表とも言える存在です。さまざまな問題をその身で引き受ける度量と覚悟が問われます。
2. 判断力
問題を抱えてしまった場合でも的確な判断を下し、解決に導ける能力のことを言います。個人の利益や感情よりも全体の利益を考えて、どれだけ物事を冷静に客観的に見ることができるかが重要です。
3. 課題発見能力
お店の問題点にいち早く気づくことで、早期解決に導けます。そのためには普段から経営面から顧客の対応、働いているスタッフの状態など、細かな変化も把握できるようにする必要があります。
4. 計画立案能力
課題の解決には、きちんとした計画を立ててから実行する必要があります。店長が無計画だと失敗したときのリスクが大きく、周りの人を巻き込んでしまうかもしれません。なにかするときには、必ず道筋を明確にしてから実行に移しましょう。
5. 目標管理能力
店長は決めた目標に対して着々と計画をこなしながら、臨機応変に変更や対応ができる能力が求められます。目標達成はお店のスタッフの協力なしでは成功することが難しく、全員に同じ意識を持ってもらう必要があります。店長が先頭を切って行動し、状況が変化しても的確に修正できれば全体の士気が高まり、目標の達成に近づくのです。
6. リスク発見・対応力
緊急事態にいち早くなにがリスクなのかを発見する能力があれば、危険を回避できます。たとえば新型コロナウイルスのような感染症が広がりつつある状況で、お客様が安心して来店してくれるにはどうしたらいいのか考え、感染リスクを下げるための対策をいち早く取り入れる対応力が高ければ、お店のダメージを最小限にとどめて生き残ることができるでしょう。
7. 顧客満足能力
お店を存続させていくためには、顧客満足度を高めて、いかに多くのお客様にリピートしてもらうかが重要です。つねにお客様の立場に立って、満足できるサービスや対応を的確に判断することが必要となります。
8. 調整力・交渉力
お店の利害関係者に対して交渉したり調節したりできる能力で、経営を優位に進めていくことができます。
9. 組織運営能力
なんといってもお店というチームをまとめていく力が必要になります。美容室は営業時間が長いため、一緒に働いているスタッフは、家族より多くの時間をともに過ごす場合もあります。そのチームワークを良くするも悪くするも店長の人間性や力量にかかっているとも言えるのです。とても大変ですが、スタッフ一人一人の個性を見極めて良いところと頑張ってほしいところをしっかりと理解し、その人の本質を認めていくことが大切です。

まとめ
店長として忘れてはいけないのは、美容室の運営は自分一人ではどうにもならないもので、スタッフはもちろん、お客様も含めた周りの人たちに助けてもらっているという感謝の気持ちを持つことです。リーダーとして全体の業務を把握しながら個々に責任ある仕事をまかせ、正当な評価をすることで、スタッフと店長のあいだに信頼関係が生まれます。その結果、お店の雰囲気が良くなってお客様の満足度も高まり、長期的な経営安定につながっていくでしょう。
