学生の時期にしか着用しない制服は、何か特別なものがある気がしませんか？
女子はセーラー服だったりブレザーだったり、高校なら私服のところもありますね。今回ご紹介する『制服』は、「京子、則子、順子、さとみと明子、幸子」という6人の女性の視点から、学生だった頃の思い出が回想されるユニークな構成の物語です。

高校生の時に男性の身体を知った京子、美術部で汚れた白衣が制服のようなものだった則子、中学生の身体で胸の発育や生理などの成長を嫌った順子、何をやっても天才肌のさとみと凡人の明子、同窓会でかつてむやみに辛く当たっていた教師と再会する幸子。

そんな6人の女性は、夫との不仲や子育ての苦労、異性との接し方への悩み、夢を諦めてしまう気持ち、嫉妬や憎しみを隠しながら生きています。大人になった彼女たちが過去を語る5つのエピソードからは「制服」という象徴を通して、華やかで愛おしい、けれど時に暗く重い何かを感じさせられます。

学生時代のわずか数年間だけ、「制服」を着られる時間。それはとても特別です。しかし、だからこそ早く脱いでしまいたいと思うこともあるのでしょう。制服を着ている間はまだ子供。子供でいたくなかったり、逆に大人になりたくなかったり……。「制服」が暗示するのは、典型的な女の子像であり、そこからはみ出したい気持ちでもあります。

個人的には美術部の『則子』の章が好きです。
初めはタイムスリップでもしたかのように描かれますが、それが回想だとわかり、美術部の仲間たちとの懐かしい日々が描かれ、現実に戻ります。あの頃とは違い、離婚して仲間たちも違う道を歩んでいました。仲間の一人の自殺も描かれています。

別エピソードの『順子』は、自分の身体が成長していくことを嫌い、まだブラジャーも着けていません。制服のリボンが可愛くまとまる胸の大きさでありたいと望む順子にも、女性としての成長は否応なく訪れます。しかも一番見られたくない相手の前で……。

「女の子」から「女性」に変わるのが「制服」を脱ぐ瞬間なのだとしたら、学校を卒業しても制服をいつまでも取っておきたくなる気持ちはわかります。二度と着ることのない制服を見るたびに、愛おしかった、辛かった、苦しかった、そして楽しかったあの頃を思い出すでしょう。

学生さんから大人の女性まで、誰でも思い当たることがある作品になっていますので、ぜひお気に入りの物語を見つけてくださいね。