美容室を経営するにあたり、税金の話は避けて通れない問題です。雇われ美容師だったときとは違い、自分で代表を務める際には売上・経費の管理はもちろん、それに伴った税金の知識が必須です。
この記事では個人事業主の美容室オーナーを前提に、おもな税金の種類、申告方法、消費税の扱い、経費に計上できる範囲、法人化するメリットなどについて紹介していきます。

美容室の経営にかかる税金とは?

個人事業主として払うべき税金を知っておこう
独立して美容室を開業すると、いきなり法人化を選ばない限りは個人事業主になります。普通の会社員であれば会社側がやってくれていた税金の計算や手続きを、自分自身で行わなければいけません。個人事業主が求められるのは、所得税・住民税・国民健康保険、個人事業税の計4種類の税金です。また、後の項でさらに詳しく解説しますが、消費税もかかってくる場合があります。
所得税は1年間の収入から経費を引いた「所得」に、一定の税率をかけて算出するものです。収入が多かったから、必ず所得税が増えるというわけでもないので安心してください。
住民税や国民健康保険も所得を元に計算されるのですが、美容室を経営している都道府県や市町村によって支払う金額が異なるので注意しましょう。
地方税の1つである個人事業税は、個人事業主が事業をする中で利用する行政サービスに対して支払う税金です。支払いの対象になるのは法律で定められた70業種で、美容業(理容業も)はこれに含まれています。カテゴリは税率5%の第三区分になります。

消費税は納税が免除になるケースがある
美容室でかかる消費税は、原則、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合は免除されるという決まりがあります。基準期間とは前々年のことを指しているので、開業してから2年間は、どれだけ課税売上高があったとしても税金はかかりません。
それなりに売上がある状態で、さらに最初の2年間は確実に免除されるのであれば、開業から3年目以降に消費税を支払う計画も立てやすくなりますね。逆に、小さな規模でコツコツやっていきたい方も、消費税を払うために無理をする必要がないのが嬉しいところです。
ちなみに美容室の消費税は、お客様からサービスの対価として預かった消費税から、店内で使用するための備品や商品を購入した際に支払った消費税を引いて計算します。

税金の申告方法

個人事業主の確定申告には、青色申告・白色申告の2種類があることをご存じでしょうか。それまで企業に雇われていた人にとっては、馴染みがなく難しく感じるかもしれませんが、仕組みを理解すればスムーズに進めることができます。
青色申告
青色申告には、特別控除という優遇措置があります。特別控除にも65万円控除と10万円控除の2種類あり、65万円控除を受けたい場合、提出する帳簿は複式簿記でつけなければいけません。10万円控除であれば、簡易簿記の提出でも大丈夫です。
青色申告を利用すると、さらに嬉しい控除が受けられます。美容室経営をする中で、どうしても最初のうちは赤字になることがあるでしょう。そんな時、青色申告なら赤字になった翌年以降、3年間の繰り越し控除が受けられます。専従者給与、つまり夫婦や身内への給与などを、経費控除という形で申請することも可能です。
青色申告なら、必要な手続きや書類内容が細かくなる代わりに、さまざまな控除が受けられてお得になるということです。

白色申告
白色申告には、青色申告にあるような特別控除がありません。その代わり簡易帳簿、簡単にいえば「自由な形式で家計簿のように入出金の記録が分かるもの」さえあれば、手軽に申告することができます。
白色申告は、申告書自体も非常にシンプルです。記入するのは売上、経費のみ。本当に簡単ですよね。ただ、最初に書いたように、お手軽ですが特別な控除も受けられませんし、赤字になった際の救済措置もないのです。自分が損をしないため、少しでも美容室経営にかかる税金を節約することを考えると、白色より青色の方をおすすめします。
美容室を開業すると、店舗や土地を購入していれば固定資産税などもかかりますから、手間を惜しまず自分のためになる確定申告を行う方が良いと言えるでしょう。
美容室の節税対策

税金を払うのは当たり前でも、やはり節税できるのであればしたいと思うものです。ちょっとでも税金を安くしたいと考えるのは、事業主として悪いことではありません。では、どのような税金対策があるのかを確認していきましょう。
申告方法は青色申告がおすすめ
税金対策として一番にやりたいのが、前述の青色申告を行うことです。先に説明したように特別控除が受けられるため、税金対策になります。
美容室を開業してすぐは、小さな店舗で最低限の人数で運営していくことになるでしょう。ですからいきなり莫大な収入を得ることは難しいですが、逆に考えれば、人件費なども最低限で済みます。小さな節約・節税をコツコツと行い、資金切れにならない工夫をすることが大切です。
たしかに、青色申告は白色申告より手間がかかります。日々の記録、確認、そして事前に必要なものを調べることが非常に重要です。しかし返ってくるものも大きいので、事業主として確実な管理を行うためにも、ぜひ検討してみてください。

経費について知る
経費を適切に計上することも、税金対策・節税につながります。個人事業主だからといってなんでも経費にできるわけではありませんが、できる限り計上して節税に努めたいものです。
家賃や光熱費もそうですが、「備品・消耗品」「宣伝・広告費」「研修代・勉強代」なども経費として計上できます。小さなところでは、業務中に使うボールペンやメモ帳、ゴミ袋なども経費になるものの1つです。
雑誌にクーポンを掲載する料金、ビラ配りにかかった費用も経費ですし、最近増えている美容室を検索できるアプリなどの登録料も経費だと考えられます。研修に行くときの費用、勉強に必要な材料やテキストの購入費など、業務に関連するものは忘れず計上するようにしましょう。

法人化を検討する
美容室を開業したばかりの時は、収入が少ないため、基本的には個人事業主としてやっていくことになるでしょう。むしろ最初から法人化すると、税金を多く取られるので損をする可能性が高いものです。いずれ美容室の経営が軌道に乗り、毎月一定以上の利益が出るようになったタイミングで、法人化するというのも節税対策になります。
法人化を考える時期としては、年間利益が最低でも600万、1ヶ月で考えたとき、売上からその月にかかった費用を引いて、手元に50万円以上残るようになったタイミングが目安です。法人化すると携帯代や車代を全額経費にできたり、役員社宅というかたちで自宅家賃のほとんどを経費化できたりもします。これも立派な節税対策です。

まとめ

美容室を開業する際、税金についてしっかり理解しておく必要があります。むしろ知らないままでいると、自分が大きく損をしてしまう可能性だってあるのです。青色と白色どちらで申告すべきか? 節税できるポイントはどこか? どんなものを経費として計上できるのか? 知識を蓄えておけば、できる限り税金の支払いを抑えることができます。
また、美容室の経営が軌道に乗ってきたら、法人化することも検討したいですね。ぜひ今回説明した内容を元に、美容室の税金について学んでいきましょう。
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